
kei
@k3245
2025年9月9日

読み終わった
東浩紀著「動物化するポストモダン」読了。
2025/9 5冊目
◎サマリ
①大きな物語消費→データベース消費へ
②主体的な構造が消え、他者なしに満たされる動物的行動
③現代はデータベース消費が加速化している?
◎書評
三宅香帆さんおすすめの一冊。
ゼロ世代批評の代表的名著と言われている本作は、オタク文化からデータベース消費を考えるという斬新な切り口が人々の興味をそそる。
中身は哲学的な要素もガッツリ入っているので、決して簡単な本ではないものの、データベース消費という概念だけでも摂取できるとモノの見方が大きく変わると思う。
① 大きな物語消費→データベース消費へ
何を言ってるんだという感じだと思うが、東先生はアニメの見方を具体例にしてこのふたつの消費行動をわかりやすく説明してくれている。
◎大きな物語消費
ガンダムに代表されるような作品
背後に象徴的な世界である大きな物語が存在して、消費者が見ているのはあくまで大きな物語と同じ世界観を反映した小さな物語という名の作品群
◎データベース消費
エヴァンゲリオンやエロゲのような作品
背後に大きな物語はなく、データベースのみがある。
消費者はデータベースから様々な組み合わせで抽出された作品を見ているにすぎない。
また、場合によっては自らデータベースにアクセスすることができる。
1990年以降はこのデータベース消費に人々の消費行動が移行しているというのが最大のポイント。
② 主体的な構造が消え、他者なしに満たされる動物的行動
では、この本のタイトルの「動物化」とはなんなのか。
これは欲望を持たず欲求のみとなった状態のことを指している。
オタクたちはオタクたちにウケるであろう組み合わせをデータベースから永遠と提供される。
そこに他者の介在はなく、与えられたものをひたすら貪る人間性の無意味化が起こっている。
この動物化理論は「暇と退屈の倫理学」の著者である國分先生はバカにしていたが、東先生は逆に注目に値するとしているのが興味深かった。
③現代はデータベース消費が加速化している?
この本は25年以上前に出版された本だが、さらにデータベース消費は加速化しているのではないかと思う。
ソニーがプロデュースしている「夜系アーティスト」も典型ではないだろうか。
売れるであろう要素、「アーティストの匿名性」、「アングラ感」、「物語性の強い歌詞」などをデータベースから引っ張り出して提供。
YOASOBIに関しては、匿名的だったものを少しずつ小出しにしていく=データベースをわざと消費者に見せている?
これをマーケティングと呼ぶのだと思うが、現代の消費者はあまりにマーケティングという名の悪魔に人間性を売りすぎているように思う。
このデータベース消費という切り口で様々な物事を見ていくのもとても面白いと感じている。