ゆうすけ | オガノート "新編 志樹逸馬詩集" 2025年9月11日

新編 志樹逸馬詩集
広島へ行く前に買った若松英輔さんの詩集の中でその名前を知り、その旅先の尾道の小さな書店にたまたま置いてありました。ここまでが綺麗すぎて、本当に導かれている感覚でした。 坂の上に立つ部屋から尾道を見下ろしながら、滞在中1週間かけて読みました。良い作品集だと思いました―― ――思ったのですが、僕の心まで詩が降りてこないものも多くて。かなり具体を言っているのだけど、想像が追いつかない。自分の黙読の声だけが頭を通り過ぎていってしまっているような。 当時、とてもじゃないけど、これの感想文は書けないなと思いました。自分の日記としても、おこがましいと。 そこからハンセン病に興味を持ち、東京の実家の近くに国立ハンセン病資料館があることを知り、先日やっと訪れることができたわけです。 かれこれ一年ぶり、これを機にもう一度読んでみました。すると―― 前より文字が濃く感じました。筆圧を感じました。 自分のではない声が聞こえました。 文字からうっすら言葉が浮かび上がってきました。 ――気のせいかもしれません。 それでもやはり、まだ分からない言葉が、心を通り過ぎていきます。 もちろん詩は理解するものではなく感じるものです。 でも、彼の作品はそれだけじゃ足りないと思ってしまう。その生い立ち・境遇・背景から想像を膨らませてはじめて、触れられる言葉があると思うのです。 ――そういう、普通の詩人と違うアプローチをしていること自体が差別じゃないか、という疑問・自省も感じます。 矛盾を感じてなお、もっと声を聞きたい、言葉を感じたいと思ってしまう。そう思ってしまうのは、彼がハンセン病患者だったからではなく、彼がこの言葉の持ち主だから。 僕は志樹逸馬を知りたい。 今夜も結局まだ知らないことがありすぎて、多くの言葉に触れられなかったことがもどかしい。 また色んなことを経験した後に、読み直そうと思います。 そのときにはもっと本から声がして、その言葉を心から受け取れるような人間になれていたら嬉しい。
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