🐧
@penguin
2025年9月13日

YABUNONAKA-ヤブノナカー
金原ひとみ
読み終わった
11章からの五松、長岡、木戸のところ圧巻だった。登場人物に情が湧きかけたところでそれを潰す最悪エピソードを入れてくるのすごい。
長岡、木戸は対になって描かれているように見える。世界と同化しながら世界には生きる意味なんてないと怒りに身を焼かれていくおばさんと、世界に取り残されて自分には生きる意味なんてないと身を投げ出すおじさん。木戸の章を読んで、おじさんになるの怖いと思った。
エピローグ的なリコの話には希望があった。長岡木戸が左右の対照だとしたら、上下の対照軸として出現する若者の視点。リコの最後のセリフぐっときたな……中年世代はどうしようもないから若者に希望を託す、みたいな構造に落とし込むとかなり陳腐に聞こえるけど、小説を読むと全然陳腐じゃなく、ちゃんと輝く希望として感じる。
1章から木戸、長岡、五松……五松、長岡、木戸のように語り手が線対称(?)になって進んでいくが、リコの話はその構造に付け足されたように最後に短くあるのも良い。コンクリートでできた構造を突き破る新芽みたいな感じで置かれていると思う。

