
橋本吉央
@yoshichiha
2025年9月12日

明治のナイチンゲール 大関和物語
田中ひかる
読み終わった
伝記的な文体だが、登場人物の人となりもよく感じられ、とてもおもしろく読めた。
江戸から明治に大きく時代がかわり、女性の社会進出の最初の一歩のひとつとして看護婦という職業が確立していく様子がよくわかる。逆に言うと、それまでの世の中で女性の社会的地位が非常に低く虐げられてきたということも強く感じられ心苦しくなるシーンも多い。
主人公大関和と、看護婦という職業の確立を派出看護婦(現在の訪問看護に少し近い)という形態を生み出し、看護婦の職業倫理と教育をしっかり謳った鈴木雅のタッグがとても良い。感情で突っ走りがちな性格の和と、冷静に鋭くブレーキを掛け引き戻す雅と、看護婦という職業への誇りが共通にあることが根底に感じられつつ、一種ボケとツッコミのようになってもいる。主観を押し通す主人公的な和と、客観を貫き通すバディの雅という構造、物語としてもよくできているし、読んでいて楽しい。
それでいてふたりとも、看護婦を必要としている環境では、全身全霊をもって病人の看護に邁進し、そこには一片の迷いもない、その姿が本当に心からかっこいい。

