
blue-red
@blue-red
2025年9月7日

しをかくうま
九段理江
読み終わった
小説
単行本
ちょっと悪い言い方をすれば、読後の感覚はどう受け止めればいいかよく分からず座りが悪い。即物的だが良い言い方をすれば、読後もたくさんの伏線・ダブルミーニング・メタファーを咀嚼して味わえる小説。
登場人物たちの会話と行動はなんとも浮世離れしており、一般的な意味での共感は誘わない。最後の自分の脳で創作することに拘る未来人が、もっとも現代人的で共感しやすいのが皮肉的だ。作者の本意ではないかもしれないが、昨今の「考察」系のテーブルに載せることもできそうだなと思った。
座りの悪いままにしておくのも良いが、自分なりの解釈を本棚に戻す前に書き残そう。
「しをかくうま」とは「詩を欠く馬」。言葉は詩であり、名前は詩であるのに、作中で名前が呼ばれないままの主人公は「詩を欠く馬」であり、馬=詩=言葉を追い求める続ける。TRANSSNART(主人公の子孫か)もまた言葉を追い求め、雨の中で立ちすくむ。この物語は、言葉を自分のものとする欲望から、不治の病のように逃れられない者たちの焦燥の物語。
