
あむ
@Petrichor
2025年9月14日

二人キリ
村山由佳
読み終わった
まずは何も知らずに読んでほしい。
読んだ後、必ずとある「事実」が気になるはずだから、思う存分調べてほしい。
フィクションと事実が折り重なって自分の思考を広げていく不思議な感覚に、読了後も支配される美しい作品です。
以下ネタバレ含みます
-------------------------
私はこの物語を、事実ではなくフィクションとして読む。
そうしたときに、この物語に登場する人物の誰もが不完全な人間であり、自分の都合のいいように捻じ曲げた真実を抱えて生きている。それぞれの正義に共感して寄り添えば、それぞれが犯した時に小さく時に大きな罪を、「それも仕方がなかった」と思えるようにまとめてある展開は、とても美しいと思った。
誰にでもバックグラウンドがあって、その中のなにかひとつの出来事が1人の人間を歪ませることなどザラである。そのきっかけが別の誰かにとっては些細なことであっても。
その中で見出した救いも、幸せも、誰に正しいと評価される筋合いもないのだ。
世間の目に晒され、時に誰かを不幸にし、時に笑い物にされ、エンタメとして消化されてきた2人の愛も、私は異常だとも狂っているとも思わない。
こんな私の個人的な評価も、お定さんが読んだら「勝手なことを」と怒られてしまうだろうか。
この事件の真相など、正義など、その正解はお定さんだけのものだし、吉さんだけのものである。
それでもなお、私は私の正義を正当化するためにも、この物語を美談にしたいのかもしれないと思った。


