セルジオ "ある男" 2025年9月30日

セルジオ
@sergio
2025年9月30日
ある男
ある男
平野啓一郎
難病で子を亡くした母親、子供への向き合い方で溝が深まる夫婦。ある時から出自を伏せるようになった在日朝鮮人。急に高まり広まったヘイトクライム。謎めいた展開の中で、いろんな立場の登場人物の胸の内が細やかに描かれ、ひきこまれていく。しばらく海外で暮らして帰国した2014年、立ち寄った本屋に嫌韓本と日本礼賛本が平積みしてあってなんじゃこりゃ、とびっくりした。気持ち悪いと思った。そのころの空気感を思い出しながら読み進めている。
セルジオ
@sergio
交通事故で亡くなった優しい夫大祐。それは、妻に生い立ちとして語った旅館の次男坊ではなく、殺人犯の息子だった。父は死刑となり、母方の姓にかえても知られ、生きづらかった。犯罪は誰の責任なのか。社の中で追い込まれ、罪を犯し、国によって殺される。国籍や家族、変えられない出自に苦しむ人がいる。だれもが行きやすい世に、寛容に、愛を持って受け止める世の中を望む。ただ、突然出奔しそのひぐらしのような労働者生活をしている旅館の次男坊、美涼が愛したそのひとが、下卑たものいいをするようになるのもまた、暮らしだと印象に残った。
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