
読書猫
@bookcat
2025年9月14日

さみしくてごめん
永井玲衣
読み終わった
(本文抜粋)
“わたしは選ばれないままに、未知に出会いたい。特別な誰かではない仕方で、未知に触れたい。カフェでうろうろと座りたい席を探すように、未知に近づきたい。この世界をよく見たい。幅広さではなく、奥行きを研究したい。そうなると自然に、「散歩」という手立てが浮かび上がってくる。”
(「念入りな散歩」より)
“何かをよく見ること。そのために距離をとること。その際に、免れ得ない問いがある。それは、どこから見るのか、という問いである。見つめるそのわたし、それはどこかで見ているのか。誰として、それを見るのか。“
(「見られずに見る」より)
“やさしくすることは、体力を使う。やさしいとは、いたわる、思いやる、愛する、心を届ける、心配する、そのすべてを煮込んでそれぞれの境目がなくなったような態度である。そこには迷いがある。逡巡がある。躊躇がある。わかりにくさがある。時に発揮されず、隠されることもある。誰にも気づかれずに、どこかへしまい込まれ、そのまま忘却されることもある。”
(「きみの足を洗ってあげる」より)
“ただ存在するだけの運動をしようと思った。これは、生産性だけでものごとが測られてしまうことに抵抗するささやかな社会運動のつもりでもあるし、ただ存在することを自分にゆるすためのトレーニングでもある。”
(「ただ存在するだけ運動」より)
“ことばが馬鹿にされ、ことばが無視され、ことばが届かないと思わされているこの世界で、それでもことばを書く理由は何だろう。”
(あとがきより)

