
Jun Nagata
@nagata_jun
2025年8月4日

歴史とは何か 新版
E.H.カー,
近藤和彦
読書メモ
E・H・カー『歴史とは何か』は、「歴史とは現在と過去のあいだの対話」という言葉で知られる古典的著作で、6つの講義を基にしている。歴史的事実はそのまま客観的に存在するのではなく、歴史家が社会的・歴史的環境の中で選び、解釈を与えることで初めて意味を持つ。ゆえに「歴史とは歴史家と事実の相互作用」であり、書かれた時代によって内容も変わり得る。歴史家は現在の問題意識をもって過去を照らし出し、過去もまた現在を理解する光となる。歴史は原因の探究であり、個人の意図を超えた大きな力や制度が歴史の流れを形成することを示す。同時に歴史は進歩の観念と結びつき、未来への展望と不可分である。制度への倫理的評価や「進歩としての歴史」をめぐる議論を通じて、歴史学は単なる過去の記録ではなく、人間の自由と責任を意識化させる営みとして位置づけられる。