
夏海
@myhookbooks
2025年9月16日

光の犬(新潮文庫)
松家仁之
読み終わった
核家族であるということ、血の繋がりゆえの嫌悪、優しさを黙らせる自己防衛、達観し線引きし関わらないこと、諦めゆえの負担、さまざまな要因から歪み、歪なまま固まり老いていく人々。
一家族を軸にした話なので、逃げ場がなくて辛かった。
核家族の中で発生する歪みは、優しい人への負担にしかならない。優しい人はどうにかしようとしても、歪みは硬く、優しい人を傷つけ、疲弊させ、諦めさせる。
添島家の話は、決して珍しい話ではなく、よくある話だからこそ、惹きつけられるのだけど、同時に虚しさも感じた。
タイトルが「光の犬」だけど、犬は添島の光だったのだろうか。そういう意味なのだろうか。あまりにも風景のように描かれた犬たちだった。
作者の意図とは違うかもしれないけど、核家族について考えさせられる話だった。核家族で育ったから、核家族の良いところがたくさんあるのは分かるし、核家族で良かったと思うけど、子供を育てるということだけを考えると、核家族はとても不向きなシステムだと思う。ただ祖父母と一緒なら良いという訳でもなく、やはり複数家族で見守り育てるのが良い気がする。たくさんの目、価値観、立ち位置、役割の中で育った子はどんな風に大人になるのだろうか、としばし考えた。



