
成功者の味方は怠慢な他人
@No_Read_No_Life
2025年9月13日

蹴りたい背中
綿矢りさ
読み終わった
借りてきた
書き出しの「さびしさは鳴る」から心情を書き連ねた冒頭や物事に対しての例えの多さが思春期真っ只中の主人公の内向的な性格を映し出していた。特に「人間の趣味がいいから幼稚な人と喋るのはつらい」や「先輩達は自分達に染まらない私を脅威だと思っている」などの他の人とは違う自分を無理矢理評価する思春期特有の拗らせ方の描写が素晴らしいと感じた。
思春期の気難しさやアンバランスさをラブコメ青春物語ではなく、ある種の気色悪さという視点で描いていて、それを強調するかのように友人である絹代が2人の関係を「恋愛」という安易なカテゴライズをするのに対し「蹴る」という独特な答えを生み出していた。
巻末の解説にはこの作品が売れた理由の一つとして「今風の若者を描いている」事を挙げていたが、この作品で言う今風の若者とは我が道を行く2人なのか、グループに属する事を優先する他のクラスメイトなのか、はたまた両方なのか疑問に思った。作者は当時19才でこの作品を書いたそうだが、俯瞰で見る力が飛び抜けているなと感じた。
380円

