ゆけまる "みんなが手話で話した島" 2025年9月16日

ゆけまる
ゆけまる
@yukemar_14
2025年9月16日
みんなが手話で話した島
みんなが手話で話した島
ノーラ・エレン・グロース,
Nora Ellen Groce,
佐野正信
よい。最近世界史関連書籍読んだ影響か、栄枯盛衰の物語になんだかグッとくる。マーサズヴィンヤード島の聾コミュニティの成り立ちから、ユートピア的な最盛期の様子、そして終焉と、丁寧な調査による一種の「物語」的な構成が効いてた。歴史の必然を感じる。引きのある主題をさておいたとしてもシンプルに書き物として面白い。成り立ちの分析の話は特に丁寧に書かれていて、だいぶ遺伝学的な話があったのも嬉しかった。ちょっとしたミステリーみたい。インタビューを基にした島民の描写も生き生きとしている様子が伝わってきてとても気に入った。当たり前だからこそ記録が残らない、って民俗学界隈の話で聞いたことがあるんだけど、まさに本件もその例の1つで、聾者がごく当たり前の存在だったが故に文書記録にも残らないし、回想の中でも聾であることが特段意識されていなかったというのが印象的。 聾、手話界隈はあまりに勉強不足すぎて、何ら立ち入ったことは言えないのだけど、なんだかほんとに考えさせられるよ。古き良き時代の話だよなぁっていう気もしてしまう。現実味がないと思ってしまうくらい、素敵な話。でもこの「現実味がない」って思ってしまうところが打破されるべきところなのかな、わかんないけど。ゆる言語学ラジオの堀元さんも言ってた気がするけど、こういう話こそ義務教育で扱ってほしい。で、きっとこの手の話って何も聾に限った話ではないんだろうなって思うと、途方に暮れてしまうような、無力感のような思いがある。それでも、この話を「知っている」かどうかって大きいんだと信じてる。 やっぱりこういう話を聞くとさ、どうやったって「泳げない者は沈め」とは思えないよ私には。
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