きよ "わたしを離さないで" 2025年9月16日

きよ
きよ
@kiyomune
2025年9月16日
わたしを離さないで
わたしを離さないで
カズオ・イシグロ,
土屋政雄
わたしにとって、読み終えるのに時間を要する本だっだ。 コロナ療養中のお供にはカロリーが高すぎたけれど、療養中だから色々考えながら読めたとも言えそう。不思議な本。 とりとめもない幼少期の記憶は、下手をすると冗長とも言える文量だというのに、うっすらとした不穏さを適度に嗅がせながらだれることなく続く。 こちらに解明の手応えをたいして与えぬまま、かと思えば時折、不自然さを全く帯びずに鋭く核心の話をつきつけていく、バランスが見事。 はじめは音楽つながりでしかなかった表題も、湿地帯に乗り上げた船を3人で観に行ったあたりから、あらゆる人の思いとしてガッチリ機能しはじめ、格好いいったらなかった。 まさかこんなメロウなタイトルが、切実なメッセージとして機能すると、読前誰が思うだろうか。 そういえば途中、トミーとキャシーはルースみたいな女のどこがいいのだ、とかなりイライラさせられたが、思い起こしてみるに、知ったかぶりの、大人びて見える同い年の女の子が、幼い時ほど輝かしく、歳をとるにつれ煩わしく見える、というのは、往々にしてあるな……
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