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きよ
きよ
@kiyomune
本を、読むぞ!オー!
  • 2025年9月16日
    わたしを離さないで
    わたしを離さないで
    わたしにとって、読み終えるのに時間を要する本だっだ。 コロナ療養中のお供にはカロリーが高すぎたけれど、療養中だから色々考えながら読めたとも言えそう。不思議な本。 とりとめもない幼少期の記憶は、下手をすると冗長とも言える文量だというのに、うっすらとした不穏さを適度に嗅がせながらだれることなく続く。 こちらに解明の手応えをたいして与えぬまま、かと思えば時折、不自然さを全く帯びずに鋭く核心の話をつきつけていく、バランスが見事。 はじめは音楽つながりでしかなかった表題も、湿地帯に乗り上げた船を3人で観に行ったあたりから、あらゆる人の思いとしてガッチリ機能しはじめ、格好いいったらなかった。 まさかこんなメロウなタイトルが、切実なメッセージとして機能すると、読前誰が思うだろうか。 そういえば途中、トミーとキャシーはルースみたいな女のどこがいいのだ、とかなりイライラさせられたが、思い起こしてみるに、知ったかぶりの、大人びて見える同い年の女の子が、幼い時ほど輝かしく、歳をとるにつれ煩わしく見える、というのは、往々にしてあるな……
  • 2025年9月7日
    生命式
    生命式
    今現在、真っ当と言われる(であろう)感覚で気持ちが悪いと思われるものが美しく、美しいと言われるものが恐ろしく描かれている。反対にしただけ、と言えばそうなのだけれど、こんなに見事に濁りなくきっちり、180度ものの見方をくるっと変えてものが書けるものかしら? 頭の中に手を突っ込んでぐちゃぐちゃにされたような、ぐちゃぐちゃにされたことで冴え渡ったような、奇妙な感覚。
  • 2025年9月2日
    東大卒、じいちゃんの田んぼを継ぐ 廃業寸前ギリギリ農家の人生を賭けた挑戦
    農業従事者から、消費者に向けて渡す、名刺代わりのような1冊。 取り組みの目的を丁寧に説明して、手段を具体的に紹介してくれるため、本人のこれまでを知らずとも、きちんとストーリーを追える。なおかつくどくない。テーマごと、見開き2ページに文量をまとめきる手腕も見事(話し足りないことはおそらく別章に分けている)。 農業の悩みについては、ちょこちょこ本や記事を読んできたけれど、この本のように数値(畑の広さや利率など)を出してくれているものは多くなく、イメージが掴みやすくてとてもよかった。 ともすれば「イメージ戦略をもって自分をプロモーションするしたたかな人」と言われそうなところも含めて、バランス感覚が鋭い印象。 雑事に惑わされず、納得のいくお米づくりができますようにと応援したくなる(のがまた、利休さんの術中に嵌っているので愉快だ)。
  • 2025年8月31日
    日々の100
    日々の100
    パーソナライズしたAIに「お前さんが好きそうだ」と勧められて買った本。ストライクのど真ん中で焦った。 松浦さんの生活に寄り添う、愛着のあるアイテムを一点一点紹介している本で、文字数も多くないのだが、物の手触りや味わいを想像する余白があり、読み応えがある。 100以上のものの紹介文を読むうち、松浦さんがまるで知り合いであるかのように感じられて愉快だ。 物との付き合い方が人となりを見せてくれるのはどうにも、たまらなく素敵だ。
  • 2025年8月28日
    ただいま装幀中
    ただいま装幀中
    すこぶる健やかで、元気の出る自賛の本(悪口では全くない)。 ちくまプリマーが「子どもへのプレゼント」というコンセプトで作られていることをふまえ、贈り物なのだから、「自分たちが作った表紙は最高だ!」という気持ちで送り出した方がよい、という心持ちはとても爽やかで、私も仕事でこうありたいなと心底思った。
  • 2025年8月28日
    体の知性を取り戻す
    身体を活用するもの(スポーツや芸術などら習い物として多く取り上げられている活動)に関する指導者の本を読むと、スキルを言語化することの重要性を説く本が、未だ多くある。一方で、例えば機械を指に嵌め、ピアニストと同じ動きを体験させることで上達を図る科学技術が生み出されるなど、身体の感覚に注目した本も、いろいろ出版されつつある。 根性と忍耐のレッスンから脱出すると、言語化派と身体感覚派が生まれるんだな…… それにしても今、バーチャルがリアルとして立ち上がりつつある中で、最も身近な「身体」の動かし方を改めて考える人たちがいる、というのは、生きることに対して誠実な感じがし、とても面白い。 ISBMを読み込んで、はじめて2014年発行の本だということに気づきびっくり。 知識武装の硬直に、もう10年も前から警鐘を鳴らしていた人がいたのだなぁ。
  • 2025年8月19日
    増補版 大人のための国語ゼミ
    理由と根拠と原因は、どう違うのか。 主張が理解できても納得できないとき、相手の理論をどう紐解いて、己の違和感をどう伝えるか。 感覚で理解し、流してしまいがちな「途中経過」の部分に、きちんと一時停止を入れて、理論で整理してくれる。 「読めば国語力がつく!」という類の、さも即戦力がつきそうなテクニックを謳うでもなく、何からはじめればよいか、基本を説明して、あとは実生活で試してみてください、と放流してくれるところに、読者、もとい言葉に対する信頼を感じる。
  • 2025年8月18日
    地図でスッと頭に入る平安時代
    地図「で」「スッと頭に入る」、というところにポイントがあるようで、進軍の跡など、地図により視覚的に面白く浚えた出来事ももちろんあったが、すべての事象に必ずしも地図が必要というわけもなく、結果として、タイトルの縛りが地図ベースの図解に難しさを生んだのではないか、と察せられる一冊になっていた。 そもそも、視覚情報で読者にスッと理解させるには、図の作り方(矢印の引き方だとか)そのものに整理が必要なのではないかしら。地図という、動かしがたい背景の上に情報を乗せるのだから、情報整理が困難であることは察するに余りあるけれど、見づらさを感じるページが多くあったのは確かだと思う。
  • 2025年8月18日
    スクラップ・アンド・ビルド
    退院後のアディショナルタイムオーディブル。 本全文が、最後の数行に至るまでの壮大なトレーニング記録だ、という印象。 タイトルを正しく踏まえて、前半は、単純な対比とイエス/ノーの判別が続くが、後半から少しずつ顔を出す「あわい」への視線や思考がとても良くて、丁寧な成長を感じる。 特に、「老い」を反面教師として捉え、肉体を磨く流れが、老いを学びとして闘志を得る流れに変わったのは、本当にいい。 あと、老いに対する嫌悪が、どこかコケティッシュなのが不思議で、胸が過度に傷まないのもよい。バランスに唸る。
  • 2025年8月13日
    継続する技術
    継続する技術
    同名アプリのコラムや、ポップアップで出てくるちいさな文言、言葉選びのセンスが好きで、お布施のつもりで購入。 膨大なデータによる説得力と、そのデータを卑近なものに結びつける、突飛な(でも言い得て妙な)比喩、やはり唸るほどよかった。 基本的に、アプリ内のコラムを物語に流し込んだ本なので、新たな知識を得る、というよりも、肩の力の抜けた(でも要点はしっかり押さえてくれている)文言を楽しむ一冊、という感じ。 ずっと疑問に思っていた「なぜ『1日5分』という軽い目標と、『2日空いたらリセット』という厳しめの目標が抱き合わせなのか」という点について、本書で解決できたのはありがたいことだった。 なんでもケースバイケースで、場面を分断するの、本当によくない。反省。
  • 2025年8月11日
    わたしの農継ぎ
    わたしの農継ぎ
    筆者のお父さんみたく「『しんどいことを黙ってやる』のが農家」という考えでは離農の防止や新規参入の推進は進まないと思うし、筆者のように、どう畑と付き合っていくかを考えながら身体を動かすのは、とても誠実だと思う。俯瞰して見ることができるのは、二拠点ならではではないか。 一方で、この二拠点はやはり、頑固ながら学びに精力的なお父さんと、農作業に集まる人々を支えるお母さんあっての活動のようにも見えてしまい(とくに今作は強く感じられて)、読了後、複雑な気持ちに。
  • 2025年8月5日
    N/A
    N/A
    入院中オーディブル第四段。 言いようもなく、その時々絶望的な、どうしても受け入れがたいものを前に、何を言うか/どうするか。 ゆっくり考えられるならいいけれど、今は「今」の力が強いぶん、「そのとき」が勝負で、しかも言葉は「力があるもの」と見なされている。 だから、その言葉を「引き出せない」自分が無力に感じられたり、あるはずだと指で硬い地面を掘るような努力で探さなければならなかったりする。 その息苦しさの描写が、壮絶だった。 テーマはしんどかったけど、言葉に疲れたことのある人の、言葉の力だったように思う。
  • 2025年8月5日
    コンビニ人間
    コンビニ人間
    入院中オーディブル第三弾。 主人公の古倉さんの思考を地の文で読んでいると、まるでAIの思考回路って、こんな感じなのかしら。 もう発表されてから10年経ちそうな勢いの作品なのに、まるでここ1、2年の芥川賞みたく思う。 たとえば話し方の流れとか、相手の話し方のクセを分析して、それに合わせて喋り方を変える理由が「こうすると喜ばれるから」なんて、AIの言語の組み立て方とよく似ている。 これを、研究者じゃなくて、一作家が生成AI台頭前、個人で書き上げたというのがすごい。 未来予測……と一瞬思ったが、考えてみると「予測」というより、もうすでにいた「溶け込みにくい」人を、観察力のある人が綺麗に傷なくくり抜いた、という感じ。たぶん、発表時からすでに「現在」だったんだろう。 多分、古倉さんが私の目の前にいたとして、観察力がないから、「自我がないな/考えがないな」と思ってしまうと思うけれど、地の文を読むと、ここには確かな「思考」がある。 自我は欲望に直結する発信行為だけど、考えは受動的な反射行為でもあるから、私が同時に抱くであろうふたつの感想は、ちょっと的確さに欠けるのだろう。 それにしても白羽さんは生理的に無理だ……どうしてコイツを一瞬でも生活に引き入れてしまったんだ……引き入れざるを得ない世界の圧を恨む……
  • 2025年8月4日
    アマテラスの暗号(下)
    たとえば、伊勢神宮の斎宮がなぜ女性なのか、だとか、 なぜ淡路島が日本で最初に生まれた場所なのか、だとか、引っかかっていたことに対して、そうかもしれない、と思わせる話はいくらかあり、面白く読んだ。 が、なるほどな、と思うよりも、血液型の性格判断のように、言われたことと事実の偶然の一致を真理だと信じ込ませるような論調でもあり、評価の難しい本だな、と思った。 多国籍の面々が日本の神道の謎に挑む流れで、最初は、頭のいい人の文殊の知恵大会みたいだな〜とのんびり思えていたが、「静かな最初の神の宮。あれっ?これ石上神宮のことかしら?しずかなところにある神宮だし――」をはじめ、院からどんな徳の高い勉強をしたら、ユダヤ人で日本滞在歴の浅い人が、日本の神社辞典みたいな脳みそになるのか等々、ツッコミも溢れ返りはじめ、各国のミスリードも相俟って、だんだん集中できなくなる自分が面白かった。
  • 2025年8月4日
    アマテラスの暗号(上)
    入院中の課題図書よ!と、古代史の好きな母から渡されて読了。感想は下巻に。
  • 2025年8月4日
    カフネ
    カフネ
    入院中オーディブル第2弾。 相手のことがわからなくとも、相手のことを想うことができる、というのは、とびきり神秘的で、だからこそひとりよがりになるし、心から相手を労わることができるのだろうな。 私は、真面目な人が、とてもとても先の、人から見れば何てことはないイベントを、真剣な口調で語ったり、約束したりするタイプの人がとても好きです。
  • 2025年7月30日
    バリ山行
    バリ山行
    入院となり、本が読める!と思ったが、開腹手術でそれも難しそうなので、オーディブルに申し込み、初めて「聴いて」読んだ本。最高に面白かったが、できれば書面で、文字を追って読みたかった(理由後述)。 会社におらずとも周りから気にもされない妻鹿さんが、本当に会社からいなくなってから、波多くんの中でその存在感を(正確な理解をひとかけらも許すことなく)膨れ上がらせていく、後半のスピード感の良さ。 しかもそれは波多くんが、波多くんを傷つけないように膨らませていく想像の妻鹿さん像から、いくらか誠実で、実感的な妻鹿さん像へと切り替わりつつあり、その切り替わりが、山登りの後半である、というのがまた面白い。自然の中で、ごまかしが効かなくなる感じ。 でもそれは、妻鹿さんの領域には程遠くて、へばりついた自分本位は、ぜんぜん剥ぎ取れていないのがまた面白い。し、それは私が、同族嫌悪に近い感じで波多くんを嫌いな理由でもある。 特に妻鹿さんが慕わしいので……波多くん許すまじ…… 波多くんの暴言の一件がなくとも、妻鹿さんはどこかでするりと会社を去っていたように思うけれど、それでも小石を一つ投げ込んだ無神経は許さないし、謝って精算することを良しとしないので(だって妻鹿さんは「気にしないでよ」以外言えなくなる気がする)、このまま一生会わなくてもいいのだが、読者として、最後の一文は最高に嬉しく、それが波多くんにとって、再開の可能性を示唆する希望であることは、まぁ傍に置かざるを得ない。 たぶん、妻鹿さんもこのバリ山行の醍醐味(というのが正解かはわからない)を分かち合いたくて波多くんを誘ったのだろうけれど、もう二度と人と登ることはしないだろう。妻鹿さんが、あらゆる意味で「結局ひとり」という結論を出さざるを得なかったバリ……あんなに優しい人なのに…… さて、オーディブルの話。 まず、標準速度は遅い。かといって、1.5倍は聞き取れるけれど、本が「情報」に堕ちてしまうので、1.2倍が限度。 それから、感情が読み手に支配される。喜怒哀楽がしっかり声に乗っているので、こちらが好きに頭の中で舞台を組み立てることができない(読むのはうまかった……妻鹿さんのあのちょっと高い声と、藤木常務の声の落ち着き)。 漢字は表意文字なので、視覚情報なしに音読されるのも向いていない。 何より、場面転換を表す二、三行の空きが視覚的にないので、場合によっては一瞬、話が飛んだように思える。 やはり文字を追うのがよいな、とは思うものの、隙間に手軽に本が聴けるのはありがたいもので、今後のお付き合いは慎重になしてゆきたいとのである。
  • 2025年6月1日
    リサーチのはじめかた
    リサーチのはじめかた
    若いひとたちが、問いを立てるのに悩んでいたので、方法論を確認すべく入手。 リサーチクエスチョン作成に至るまでの手立てを明文化し、確立すると、これほど途方もない手順が必要になるのかと驚いた。驚いたが、手順に特別目新しいものもなく、割と似たようなことを無意識でやっていたらしいことがわかって、これも愉快だった。
  • 2025年5月8日
    ハチドリ舎のつくりかた
    この春から少しだけお邪魔をしている、ソーシャルブックカフェの店主さんが書いた本ということで、購入。 わたしがこの場所に出会ったのは、職場や社会で使われる、温度感の異なる「対話」という言葉の、もっともわたしが正しいと信じられる定義を探すためだったのだが、この真面目な問いに、日常と一続きのカフェという場が応じてくれること、そのことの頼もしさを、改めて噛み締めている。
  • 2025年5月6日
    撮るあなたを撮るわたしを 自撮りとスクショの写真論
    カラーチラシのコート紙で本文が作られた本に初めて出会った。めくりやすさの低下と、裏の文字の透けは、ちょっと頂けない感じ。 ただ、この装丁は、unpisさんの不思議なイラストとの親和性のみバツグンである。ツルツルしていて、すべてに掴みどころがない。 序章の、猫で溢れるSNSの話だけで、すでに満足度が高い。 写真の在り方が著しく変わったというのに、その在り方に、社会的価値観がまったくついていけていないことが、ありありと見てとれる。 顔という、手触りとしてアナログな個人情報が、データとして取り扱われ、意識せず暴かれていくことに、ひんやりとした不安感を覚える。 保護と侵害の攻防、撮ることと撮られることの価値づけ、どんどんスイッチしていく物事についての哲学的な問いが、筆者によってどんどん展開していく。 スピード感のある本。 メモ 量産型の化粧が隠したもの 母親の姿がないカメラロール(撮影をしなくなった父) カラー化が共感を呼ぶという図式の安直さ
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