DN/HP "地下鉄道 (ハヤカワepi文..." 2025年9月16日

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2025年9月16日
地下鉄道 (ハヤカワepi文庫)
地下鉄道 (ハヤカワepi文庫)
コルソン・ホワイトヘッド
野田努『完全版 ブラック・マシン・ミュージック』のデトロイトのアンダーグラウンド・レイルロードの件を読んだら、この小説も読み返したくなった。  「コーラは奴隷たちの物語を、生まれつき鎖に繋がれていたが文字を覚えたひとびとの手記を読んだ。またアフリカから拉致され、故郷や家族と引き裂かれたひとびとの拘束の悲惨さ、そして逃亡の恐怖を描いた物語を読んだ。自分の物語だとコーラは感じた。コーラの知るすべての黒人の物語、そしてこれから生まれてくる物語。彼らがいつか勝利するための足掛かりとなるものだ。」 コルソン・ホワイトヘッドは未だ勝利したとはいえない時代に、精緻な調査と想像力を使って、足掛かりとなるその物語を書いた。「列車が走るあいだ外を見ておくがいい。アメリカの真の顔がわかるだろう」物語にたびたび太字で登場する台詞。コーラがいくつかの土地で体験、知ることになる真の顔とはつまり、建設と文明化のなの下で行われた侵略と征服であり、破壊と隷属、そして撲滅へ向かう白人の顔なのかもしれない。黒人作家が繰り返しそれを書くのは「白人がやろうとしないからだ。だからわたしたちは、自分でやらなくてはならない」からなのだと感じる。わたしたちはこれを「自分の物語」として読むことは出来ないけれど、それを知ることはとても重要であり、自分の社会に省みることも、「やらなくてはならない」。
地下鉄道 (ハヤカワepi文庫)
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