もぐもぐ羊 "老いぼれを燃やせ" 2025年9月17日

老いぼれを燃やせ
老いぼれを燃やせ
マーガレット・アトウッド,
鴻巣友季子
続き 「わたしは真っ赤な牙をむくズィーニアの夢を見た」 ズィーニアは仲良し高齢女性3人からかつてパートナーを略奪した女性(故人) 仲良し3人のうち犬を飼っているカリスのもとにズィーニアと共に姿を消したパートナーのビリーが戻ってきて、カリスは二世帯住宅の空室を貸している。 他二人はビリーがカリスの財産を奪うのではないかと心配して犬のウィーダをプレゼントしていた。 ビリーをウィーダが噛み、それがきっかけでカリスの目が醒めて、ズィーニアは自分たちからろくでもないパートナーを引き剥がすために存在していたのかもしれないと言い出す。 カリスはウィーダに乗り移ったズィーニアがビリーに噛み付いてそれを知らせてくれたと。 ちょっと奇想天外な発想ではあるけれど、ビリーはいろいろと曰く付きで一緒に暮らすべきではないと悟って家からも追い出し、新たな入居者が現れてめでたし! 高齢になっても仲良く散歩したり食事できる仲の友だちがいるのっていいな〜 「死者の手はあなたを愛す」 四人の貧乏大学生が一軒家を借りてシェアして暮らしてた時、そのうちの一人のジャックは家賃を払えなくなり小説の印税を三人に分けて支払うと約束して契約書をかわした。 その後その小説がヒットしてしまい長年に渡り印税を四分の一しか受け取れないジャックが他の三人からその権利を取り戻そうとする話。 全員が老境に入り、一人は膵臓がんで権力を手放すし、もう一人はすでに権利を持っていなかった。 四人のメンバーのうちのイレーナと結婚、のちに離婚した際に権利をイレーナに譲渡していた。 小説はホラーでもありユーモラスなストーリーだったがジャックを含めた四人が登場していた。 最後の権利の持ち主のイレーナは元恋人でもあり、なんだかんだで丸く収まってよかったね!という感じだった。 「岩のマットレス」 十代の頃にレイプされた男に北極圏クルーズで再会しクルーズ中に男を殺すことにしたヴァーナがそれをやり遂げられてよかった。 ヴァーナは街を追われ教会で子を産み(レイプで妊娠していた)、子は養子に出し、今でいうパパ活のようなことをして学費を貯めて大学に行き人生を軌道修正して生きてきたのに、男は罪に問われることもなくのうのうと生きてきたことを知ったら腹も立つよね。 しかもひとりで参加していたヴァーナを口説いてきたけど、過去に自分がレイプした少女だと気づいていない。 死体が見つからない完全犯罪。 「老いぼれを燃やせ」 タイトルから以前話題になった「高齢者は集団自決」みたいな話かな?と思ったけどそれがさらにエスカレートした世界の話だった。 高齢者施設を標的にして、食糧は入れず職員を追い出し建物を燃やすというのが世界で同時多発的に起きるというディストピア。 語り手のウィルマは視力をほとんど失っていているがシャルル・ボネ症候群の症状で小さい人の幻覚が見える状態。 シャルル・ボネ症候群というのをはじめて知ったけど、岡田あーみんの漫画にたまに出てくる幻覚の小人を思い出した。 訳者解説がないとアトウッド初心者には理解が難しい箇所があったけどおもしろかった!
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