蛸足配線 "天使は見えないから、描かない" 2025年9月16日

蛸足配線
@nekoai30
2025年9月16日
天使は見えないから、描かない
その自覚がなくとも、「たしなみ」としてパートナーを作る人は実際それなりに多いのではないだろうか。恋人や家族の有無が、社会では正常さや幸福を測る指標として機能しているから。まともで幸せな人として扱ってもらえるならそれに越したことはない。「べつにみんなが幸せになるために恋愛するわけじゃない」という台詞は、多くの恋愛は幸せになるためのものだという発想があってこそ成立する。そして幸不幸は抽象的な思考が生み出す概念で、肉体の快不快と完全に一致することはまずないだろう。特定の誰かに惹きつけられる現象は、おそらく睡眠や排泄のように体に備わったシステムが作用した結果であり、思考を通して測る幸福とは連動していない。そのズレが小さければ個人も社会もわりあい円滑に回るのだろうけど。 一般的な幸福のために思考主体で行う交際から得られる経験値は、たぶん恋の技量というより社交や交渉のためのスキル。交際人数や性的な場数が恋愛経験とイコールではないのはきっとそういうこと…。人付き合いの技術が無意味に堕す深みに足をとられてもがくような恋に落ちるには、おそらく巡り合わせと愚かさが不可欠で、大抵の人はそれを上手によけたり潜り抜けたりできる程度には幸運で賢明だ。主人公のように「情熱的な変人」にはなれない。
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