
ぽぽ
@wakio
2025年1月11日

文庫 銃・病原菌・鉄 下
ジャレド・ダイアモンド,
倉骨彰
読み終わった
「なぜ、ある文明は他の文明よりも早く発展したのか?」
そんな壮大な問いに、科学的な視点から真正面から挑んだのが『銃・病原菌・鉄』だ。私は『サピエンス全史』を読んで人類の歴史の奥深さに魅了され、似たテーマの名著として妻に勧められたこの本に自然と手が伸びた。期待通り、いや、期待以上に知的好奇心を刺激される内容だった。
特に心を掴まれたのは、文明の進歩に人種の優劣など関係なく、地形や気候といった「環境」が圧倒的な影響力を持っているという点だ。大陸の形や動植物の分布、農耕の始まり方…。それらが積み重なって文明の差を生み出したという論理は、あまりにも明快で、思わず「なるほど!」と膝を打った。環境が運命を左右するなんて、まるで人類の壮大なゲームのルールを知らされたようだった。
この本を読んで、人種による優劣ではなく、環境要因こそが文明の発展を左右したのだと深く認識できた。この視点は、自分の中に無意識にあった偏見を溶かしていくような感覚があった。知識が偏見を打ち砕く──まさにそんな体験だった。
しかし、すべてが満点だったわけではない。内容には十分満足したものの、似たような話が繰り返されている印象があった。読んでいて「またこの話か…」と感じる場面が少なくなかったのも事実だ。だからこそ、他人に胸を張って「読んでみて!」とは言いにくい。私自身、読み進めるのに少し忍耐力を要した。
また、読み進める中で「日本の文明の歴史にももっと触れてほしい」と強く思った。日本という独自の地理や気候、歴史を持つ国が、この壮大な文明論の中でどのように位置づけられるのか。そこが掘り下げられていたら、もっと深く共感できたはずだ。
『銃・病原菌・鉄』は、人類の歴史を環境というフィルターを通して解き明かす、知的で刺激的な一冊だ。だが、その厚みと重みゆえに、読者を選ぶ本でもある。じっくりと考えながら、知識の森をさまようことに楽しさを感じる人には、間違いなく響くだろう。私にとっては、知識の喜びと、読むことの苦労が交錯する、そんな一冊だった。

