
ちゃのき
@chanoki
2025年9月20日

世界99 下
村田沙耶香
読み終わった
上巻はずっとかなり苦痛だったんだけど、下巻めちゃくちゃ面白かった。ピョコルンに性欲、妊娠、出産、家事、育児全てをさせることができるようになって、ずっと被害者だと思ってた空子の中に家事がちゃんとやれないピョコルンに対してかつての夫のような言葉が湧き上がってくるところの被害と加害、搾取の構造がぐるぐる変わるのとか面白かった。人の性格とかって結局社会によって作られたものだよなとか。汚い感情を持つことが悪とされている"クリーンな人"という価値観もわかる。SNS見てるとそうなってほしいと思うことが多い。でもダメなんだよな。怒りを、持っちゃいけない感情ってことにしたら理不尽を受け入れるしかなくなる。恵まれた人が社会を動かしてくれるから、クリーンな人はそれを感謝し、綺麗な感情で彼らを応援すれば良いなんていうのも、政治に無関心な善良な人の比喩のようで…。結局ラロロリン人は社会を回してくれて最後はピョコルンになってくれて、ラロロリン人に任せておけば良いのだからなんていうのは思考放棄の愚かな行為で、うまく誘導されて非ラロロリン人も集団ピョコルン手術を受けることになった。悲しいね。。最後まで社会正義を信じ続けた白藤さんは、もう感情や記憶を調整されることに慣れ切った新世代の子供たちにとっては怒りとかいう見たことない感情を表す奇妙な老婆として哀れまれ遠ざけられる終わりを迎えたけど、白藤さんだけが希望だったと思うよ。周囲に、世界に媚びて生きないとこの世で上手く生きていくことはできない。この世は世界に媚びるための祭りだけど世界に媚びて生きることは世界に使われることを受け入れることなんだろうなって思う。
