
駄駄野
@enmr310
2025年9月20日

大穴
ディック・フランシス,
菊池光
読み終わった
洗練された料理を食べて、満足した時の感慨に近い。
ハードボイルド小説というのか、派手な事件もトリックもない。主人公は靴底を擦り減らしながら地道な捜査で、卑怯なやり方で競馬場を潰そうとする連中を追い詰めていく。
本作の面白みの一つが、主人公シッド・ハレーに注がれる周囲の視線にある。
ハレーはかつては一流騎手として華々しい戦績を誇った人物で、それだけでなく探偵社に勤務するうちに探偵としての観察眼も鍛えていた。だけど、競馬にさほど興味のない敵は、身長169cmほどの彼を「学のない、左手の不自由な小男」として侮る。ハレー自身も、敵が自分を侮るその視線を利用して、敵の懐に飛び込み証拠を掴んだりする。
作中内の人間関係も魅力的。顔に大きな傷がある女性が、左手に大きな傷のあるハレーとの交流を通して、自身のコンプレックスを乗り越えていくところとか。
あと嘉納治五郎は気づいた瞬間爆笑した。
