
なかむら
@duxuni
2025年9月20日

迷路 上 改版
野上彌生子
読んでる
「黒い流れ」の章。
二・二六事件を扱った小説をそれほど多く読んでるわけではないけれど、現在形で体験した著者がほんの十数年後に書いているだけあって、迫真的だった(ドラマチックに書かれているという意味ではなく)。奥泉さんが『雪の階』を書くときのモデルのひとつが『迷路』だったという発言をどこかで読んだ記憶があるけれど、嘘かもしれないのでちゃんと確認したい。
「省三は五六人の肩を押しわけて小田に近づくと、びっくりしてふり返ったほど荒く外套の腕を摑んだ。彼らはその為すところを知らざるなり。——若い兵士の無邪気な笑顔を見ているうちに、その一句がぴったり千社札のように頭蓋骨に張りつけられたのである。」(190頁)