迷路 上 改版

迷路 上 改版
迷路 上 改版
野上彌生子
岩波書店
1984年5月16日
4件の記録
  • なかむら
    なかむら
    @duxuni
    2025年10月4日
    「「行って見れば、わかるのだわ。」 三保子は口に出してそういった。揺籃めいた程よい振動で彼女を運んでいる自動車の外には、晩春の午後の町がいっしょに走った。速度につれて、緑に満ち、三時過ぎの斜光に照らされた路上のこまこました風物が、一枠、一枠、なにか焼絵硝子(ステインド・グラス)のような色彩と、輝やきで、両側の窓に嵌めこまれて行くのを、すこし疲れて、眠気のさした三保子はうつらうつら眺めた。そうして、もう汽車に乗っているような気にふとなったりするのに心づき、ぱっちり眼を見ひらいて、ひとり微笑(わら)いながら、なお旧領地への旅を思うのであった。きっと、鼓もよい品が残っているに違いない。みんな持って来るわ。それにしても、菅野が帰っていてよかったこと。——」(304頁)
  • なかむら
    なかむら
    @duxuni
    2025年9月20日
    「黒い流れ」の章。 二・二六事件を扱った小説をそれほど多く読んでるわけではないけれど、現在形で体験した著者がほんの十数年後に書いているだけあって、迫真的だった(ドラマチックに書かれているという意味ではなく)。奥泉さんが『雪の階』を書くときのモデルのひとつが『迷路』だったという発言をどこかで読んだ記憶があるけれど、嘘かもしれないのでちゃんと確認したい。 「省三は五六人の肩を押しわけて小田に近づくと、びっくりしてふり返ったほど荒く外套の腕を摑んだ。彼らはその為すところを知らざるなり。——若い兵士の無邪気な笑顔を見ているうちに、その一句がぴったり千社札のように頭蓋骨に張りつけられたのである。」(190頁)
  • なかむら
    なかむら
    @duxuni
    2025年9月19日
    「軽井沢」の章、良すぎた
  • なかむら
    なかむら
    @duxuni
    2025年9月17日
    たぶん五六年くらい前に買って、いつか読もうと思いながら積みつづけていた本。文体に慣れるまでちょっとだけ辛抱が必要だったけど、ほんとうに素晴らしくて、何でもない場面でもつい涙ぐんでしまう。
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