
noko
@nokonoko
2025年9月21日

急に具合が悪くなる
宮野真生子,
磯野真穂
買った
読み終わった
心に残る一節
さまざまな条件、幾筋もの流れが、その瞬間に「出会い」、偶然に「いま」が産み落とされる。そんなプレーに遭遇するたび、私は現実ってこんなふうに成り立っているんだと驚いてしまいます。と同時に、そこに「美しさ」を感じます。その美しさは、現実が生まれる瞬間の美しさであると同時に、その瞬間を引き受ける選手の強さでもあります。彼らは最終的に現実は偶然に左右されるものだからといって、努力すること、準備することはやめません。…それはどうなるかわからない世界を信じ、手を離してみる強さです。そんな強さをもつ選手たちに私は憧れ、「いま」が産み落とされる瞬間に立ち合って時々泣きそうになります。
約束とは、そうした死の可能性や無責任さを含んだうえで、本来取れるはずのない「決定的態度」を「それでも」取ろうとすることであり、こうした無謀な冒険、賭けを目の前の相手に対して、「今」表明することに意味があるのだろうと。
あなたがいるからこそ、いつ死ぬかわからない私は、約束という賭けをおこない、そのわからない実現に向けて冒険をしてゆく。あなたがいるからこそ決めたのだという、「今」の決断こそ「約束」の要点なのだろうと。だとしたら、信頼とは未来に向けてのものである以上に、今の目の前のあなたへの信であるといえそうです。だから和辻は、人間の真実は「人と人との間に」おいて「絶えず新しく起こるもの」と言ったのでしょう。
いま私は、「立ち上がり」「変わり」「動き」「始まる」と書きました。そう、世界はこんなふうに、いつでも新しい始まりに満ちている。一方的に流れるだけの時間のなかで点になって、リスクの計算をして、合理的に人生を計画し、他者との関係をフォーマット化しようとするとき、あるいは自分だけの物語に立てこもったり、他者に全てを委ねているときには気づけないかもしれないけれど、私たちが生きている世界って、本来こんな場所なんだ。そんな世界へ出て、他者と出会って動かされることのなかにこそ自分という存在が立ち上がること、この出会いを引き受けるところにこそ、自分がいる。
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