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@13_rooms
2025年9月22日

貝に続く場所にて
石沢麻依
読み終わった
3月11日に永訣のわかれをしたはずの友人の幽霊と再会する話。硬質で水際だった文章がとても美しい。静謐で、おだやかで、どこか現実から遠いドイツの生活のなかにすっと死者の翳が入り込んでくる様が、かえって主人公の傷を物語るようで痛ましかった。ひとたび失ってしまったら決して贖えないものがあること、喪失によってしか覚えておけないものがあること。そういう痛みと祈りを活字にすることでしか留めて置けないものがきっとあったのだろうなとおもう。
「痛みには耐えられないことを、大人が気をつけなくてはならない」「慣れていると思っても、それは痛みを巡る記憶から距離を置いたと思っているだけ」がひときわ印象深かった。