たるたる "イラクサ姫と骨の犬" 2025年9月23日

たるたる
@miyabi
2025年9月23日
イラクサ姫と骨の犬
イラクサ姫と骨の犬
T・キングフィッシャー,
原島文世
読みごたえのある、魅力あるハイファンタジーandジェンダー小説。 ジェンダーに触れるか触れないか迷いましたが、主人公達が「女性だから」の要素が強く(それが作品の要素として完璧に作用している)触れないのは不自然なので入れました。 大枠のあらすじとしては、小さな王国の第三王女が、姉達が嫁いだ北の大国の王子を魔法の力で殺しに行く話です。以下ファンタジー要素とジェンダー要素について分けて雑感。 前者については、最近では稀な童話や古典で出てきた魔法が前面に出てくるワクワクな物語運びが面白かったです。人と違うルールや魔法が普通にあることで起こる様々なシチュエーション。それ故冒険が「この先はどうなるんだろう」と魔法が物語の牽引力にもなっていて魅力的でした。 後者については、この世界に限らずですが、女性が押し付けられる側の性別であることの苦しさや辛さ・選択肢や逃げ場のなさが随所で語られています。 そのぶん男性は読むのに少し居心地が悪い部分もありますが、「制度や抑圧からの解放」が物語のもう一つのテーマかと思うのでここは外せません。 救いは、男性優位世界ではありつつも女性が上手く男性を転がして秩序を作ったり、力ある主人公側の殆どが女性で様々な能力で凡百の男より強いこと、また一人の男性の存在によって、物語がバランスの取れたものになっているように僕は感じました。 ただその存在自体や展開がフェミニストの方によっては非常に好ましくない、と感じられるのも予想されるのでこの辺りは解釈や好みでしょうか。 ともあれ、物語として面白かったのは間違いなく、お勧めです。
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