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2025年9月23日
巡礼者たち (新潮文庫 キ 12-1)
巡礼者たち (新潮文庫 キ 12-1)
エリザベス・ギルバート
閉店間際に棚から抜いたのは新潮クレスト・ブックスの方。帯の一文「短編小説でなければ書けないことがある。」に、おっと思って、裏表紙の文句読んで完全に頷きながらレジに向かった。 題名に惹かれて後ろの方に収録された一編「ブロンクス中央青果市場にて」から読み始める。腰椎の手術の療養中に組合の支部長に立候補しようと決心するアイリッシュ、現職はマフィアと関わりのあるイタリア系、市場でサバイヴする様々な民族、人々。キノコ男にプエルトリコ式のマンゴーの食べ方。ああ、ニューヨークだなと思う。意気込んだ選挙運動中にぶり返す腰痛と過去への回想のなか、56年型の青いクライスラーとともに辿り着く“ただひとつの結論”。 これもやっぱり読みたかった短編小説だった。「短編小説でなければ書けない」かどうかは分からないけれど、それが適している、それで書かれるべきものは確実にあって。たまに「魔法みたいな瞬間」とも言ったりするし、この本の裏表紙では「人生の一瞬」と書かれていたりと言い方はそれぞれにあるけれど、そういう人生の何気ないようで本当に特別な部分を切り取った短い話。そういう特別な瞬間が訪れると、理解する前に納得してしまうものなのだと思う。物語でも現実でも。 「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」やデニス・ジョンソン、デイヴィッド・ベニオフと短編と同じように素晴らしいし大好きだな、と思った。
巡礼者たち (新潮文庫 キ 12-1)
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