
まいける
@bluesky42195
2025年9月24日

森にあかりが灯るとき
藤岡陽子
読み終わった
感想
『森にあかりが灯るとき』
介護をテーマにした藤岡陽子さんの小説。藤岡さんの魅力は読後感のよさ。でも、そこに登場する人物はリアルだ。医療現場も報道現場もそしてこの介護施設現場も。
お笑い芸人を挫折し、特別養護老人ホームで働く星矢の眼を通して、介護施設の人間模様が描かれる。星矢自身も、努力が報われない現場に心が折れかかっている。介護のプロなのだから100点でなければいけない、24時間ミスなく過ごさなければとみんな疲弊している。
長年介護の現場で奮闘している介護士と施設担当医師葉山。そして思ったことをストレートに話す星矢が延命治療をめぐって対立する場面は重く迫る。
『命は大切と言いますが、
それはおそらく長く生きることではなく、
その動物らしく生きることなのだと思います。』
葉山が旭山動物園で出会った園のスタンス表れる言葉も印象深い。
一番グッときたのは、ベテラン介護士が、「彼の誠実な人柄はここにいるみんなが知っています」と警察に憤慨する場面。「背番号」を見つけることのできた星矢の自己肯定の安堵が嬉しい。
魅力的な葉山医師と新たな道を歩む星矢。またどこかで接点が生まれてほしい。
返却期限ぎりぎりで一気読み。介護の現場で働く人達にも藤岡陽子さんにも感謝。


