まいける "森にあかりが灯るとき" 2025年9月24日

森にあかりが灯るとき
『森にあかりが灯るとき』 介護をテーマにした藤岡陽子さんの小説。藤岡さんの魅力は読後感のよさ。でも、そこに登場する人物はリアルだ。医療現場も報道現場もそしてこの介護施設現場も。 お笑い芸人を挫折し、特別養護老人ホームで働く星矢の眼を通して、介護施設の人間模様が描かれる。星矢自身も、努力が報われない現場に心が折れかかっている。介護のプロなのだから100点でなければいけない、24時間ミスなく過ごさなければとみんな疲弊している。 長年介護の現場で奮闘している介護士と施設担当医師葉山。そして思ったことをストレートに話す星矢が延命治療をめぐって対立する場面は重く迫る。 『命は大切と言いますが、 それはおそらく長く生きることではなく、 その動物らしく生きることなのだと思います。』 葉山が旭山動物園で出会った園のスタンス表れる言葉も印象深い。 一番グッときたのは、ベテラン介護士が、「彼の誠実な人柄はここにいるみんなが知っています」と警察に憤慨する場面。「背番号」を見つけることのできた星矢の自己肯定の安堵が嬉しい。 魅力的な葉山医師と新たな道を歩む星矢。またどこかで接点が生まれてほしい。 返却期限ぎりぎりで一気読み。介護の現場で働く人達にも藤岡陽子さんにも感謝。
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