ユメ "BUTTER" 2025年9月9日

ユメ
ユメ
@yumeticmode
2025年9月9日
BUTTER
BUTTER
柚木麻子
序盤に出てくる「どんな女だって自分を許していいし、大切にされることを要求して構わないはずなのに、たったそれだけのことが、本当に難しい世の中だ」という一文に深々と頷く。例えば本書において、主人公の里佳は取材のために食事を重ねることで体重が増加するのだが、体型の変化を恋人や同僚にだらしないと否定される(「男のデブと女のデブは違うでしょ?」という直球の差別発言すらされる)。健康に問題がなければ体型なんて極めてプライベートなことであるはずなのに、この社会におけるルッキズムは年々加速しているように思われ、時折怖くなる。 また、男性は自分で自分のケアをすることが少ないという文脈における「ちゃんと暮らしてくれないのって、暴力だと思うんですよね」という台詞も印象深い(男性にとって、自身のケアをすることは「男らしくない」という目で見られるのかもしれず、女性とはまた違った生きづらさがありそうだとも考えさせられた。とはいえ、ケアをしないか女性に押し付けるかの二極化しているのは問題だと思う)。 その台詞に対するひとつの答えのようにも思われたのが、「ロックだよね、掃除とか料理ってさ。愛情や優しさじゃなくて、一番必要なのは、パワーっていうかさ……。なまくらな日常にのみこまれないような、闘志っていうかさ……」という里佳の言葉だ。この生きづらい世の中に抗ってゆくいちばんの手段は、私たちひとりひとりが自分を大切にしてゆくことなのかもしれない、そう思わされた。
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