
ゆうすけ | オガノート
@ogayuppy
2025年9月25日

となりの陰謀論
烏谷昌幸
読み終わった
新聞の書評欄にあって、興味があって買ってみました。タイトルが「となりの陰謀論」と怖いのですが、この時勢、一度くらいは読んでおく必要があるかなと。
陰謀論発生のロジックと、それが現実社会に与えうるダメージについて説いています。
「搾取されているという意識」と「世界をシンプルに見たいという欲望」が陰謀論を起こし、それを扇動する人物や、SNSという道具……
おこがましいようですが、概ね想像していた通りで、僕の思考を論理的に言語化してくれた本でした。なので、基本的に、言っていることには賛成できます。できるのですがーー
考えが一致したからと言って、首をブンブン縦に振るのは、話題からしてためらわれるのです。
これを読みながら気持ちよく「こんな馬鹿こと信じちゃって笑」と笑うことも出来るのですが、この本を100%そのまま受け入れること、それも一つの「世界のシンプル化」であって、もう一つの陰謀論的態度になりはしないかと思うのです。
読みながら文章と思考が一致して少し高揚しかけたとき、ふと疑問が浮かびます。
これは本当に「『となりの』陰謀論」なのか。となりから見た僕も、もしかしたら――
僕が正論だと思っているもの、僕が陰謀論だと思っているもの……そもそも、僕はほとんどの情報を自分の目で見てもいないし、自分の耳で聞いたこともない。せいぜい「僕と僕の周りの幸せのためにそうあって欲しい希望」と「確からしい権威性」に頼って確率を想像することしかできない。
いくら自分にフィットしても「情報」に気持ちよくなってはいけない。「答えを得た」と思ってはいけない。
もし気持ち良くなっている自分がいたとしたら、それこそ疑うべき対象なのでしょう。
論の進め方が少し結論ありきで一直線だったかなと思います(巻末の方の原発の議論に少しだけ別な視点を書いていますが)。もちろんページ数の限られた新書なので仕方ないのですが。目的が「陰謀論を甘く見ずにきちんと向き合おう」なのでそれは達成されているとは思います。
あらゆる情報に謙虚にいようと思い直した一冊でした。この態度も著者の「向き合う」に含まれているとしたら、良い本だったと思います。
