図書館マン "毎日読みます" 2025年9月25日

毎日読みます
毎日読みます
ファン・ボルム,
牧野美加
図書館本。本好き一家で育ち、読書をこよなく愛するようになったファン・ボルムさんによる読書エッセイ集。章が50章近くあり、盛り沢山のエッセイ集ですが、1章=3Pなので意外とサクサク読めます。本好きとしては共感できるところも多く、私はサクサク読むというよりかは、割とじっくり読んでいたかと思います。 本を読んだ全体的な感想としては「ファン・ボルムさんは物語の力を信じて疑っていないんだな」の一言に尽きます。 本に関するテーマで膨大なエッセイを50章も書くような方だから、それはそうだろうと思う気持ちもあるのですが。 私は小学生の頃に、読書家であることを馬鹿にされた経験があるので、今でも物語や言葉の力を、いまいち信じきれていないところがあります。 物語が空想なように、物語の力も空想じみたもので、そうした空想じみた力が、目の前にある鮮明で痛烈な現実と拮抗する力であるのか。力はそれだけで力であるのに、現実と戦える力であるのか、という点ばかり考えてしまって。 この世の中には、本が好きじゃない人も当然いて。だけど本好きじゃない人たちとも連帯しないと時にはやっていけない。 でも、そういう人たちには物語の力を信じてもらえないどころか、物語に力なんてないでしょって言われたりすることなんか日常茶飯事で。日常茶飯事だからこそ、私はそう言われるかもしれない瞬間のことを、永遠に恐れているのだと思います。 「物語に力なんてないでしょ」って返されても、「そっか、そうだよね」と言って相手のことを許せるように、事前に構えてしまっているというか。事前に、物語の力を信じ切らないようにしていれば、そういう相手のこともスルーできるから、物語の力を疑っているんだと思います。 でも、ファン・ボルムさんは友人に本を勧めて、自分の本を好きになってもらったり、本好きの友人と交流したりと行動しています。自分のことを知ってもらったり、そんな自分のことを好きになれるような友達といたりする工夫をしているというか。 本好きである自分を、少数派で惨めな存在として追い込むのではなく、本好きである自分を誇り続けられるような環境づくりを整えています。 正直、本好きの家庭に育ったとしても、ここまで沢山の友人たちが本好きっていう環境はなかなかないと思いますが。 単純にすごいな、と感じました。 読書の力を疑っていない方が書いた本なので、物語の力をいまいち感じきれていない人が、読んでいて背中を押される本です。 本を読むことは素晴らしい。あなたはそのままでいいんだ。 そういうメッセージが、読んでいる最中、ずーっと伝わってきました。
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