ましゅまる "傷を愛せるか 増補新版" 2025年9月26日

傷を愛せるか 増補新版
自分の経験や感覚をここまで意識的に細部も含めて言葉にできるのか……しゅごい……という感嘆が読後にはまず一番にきたなぁ。 「いったん競争の場に置かれると、負けたくないと思って自分がしゃかりきになってしまうことが。(中略)外的な要素によって自分が駆り立てられ、操作され、したくないことまでしてしまうはめになることを避けたいのだ。」 ここ、痺れた。つい付箋を貼ってしまった。 私が競争や勝負の世界が好きではなくて避けてしまうのは、私自身が温厚だからとか平和主義だからとかではない。 競争に夢中になって、目を血走らせながらしゃかりきに動き回ってはぼろぼろになっていくだろう自分が容易に想像できるからやりたくないだけなんだよな。私は絶対外部の競争圧にのまれて主体をなくしてしまう方の人間だろうからね。 ここ以外にも「宿命論と因果論」も印象深かった。 "元からこうなることは決まっていた"宿命論=無力感 "そうすればこうなる、そうやらねばこうはならない"因果論=万能感 この2つのどちらかに偏るのではなく、適度に揺れ動くことがたおやかに生きるためには必要なんだろう。 私はわりと因果論が強めなタイプで、自分のコントロール下に何かをおくことで安心感を得がち。 でもいつも脳裏によぎるのは、突然の災難に自分は対応できるのだろうかということで。 そんな大きなことを考えながら出向いたコンビニに、好きなパスタサラダがなかっただけで何を買うかを途端に見失ったりする。でも代わりのうどんはわりと美味しかった。 こういう些細な気持ちをひとつずつ丁寧に受け止められるほどには私は繊細ではないから、ヤッタ〜!としか出力はされないけど、"思ったようにはいかずとも、その先に思いもよらぬ良い事があった"小さな体験の積み重ねがいつかの私を支えてくれるのかもしれない。
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