本屋lighthouse "働かない" 2025年9月26日

働かない
働かない
トム・ルッツ,
小澤英実,
篠儀直子
ずっと低空飛行でどうにか生き延びているが、今月はもう胴体着陸しながらゴリゴリ機体を削りつつ走っている状態で、真摯にやればやるほどお店の運営が苦しくなるこの世界に嫌気がさしている。「ビジネス」をしなければお金を稼げないシステムが苦しい。そもそもお金がなければ生きていけないシステムが苦しい。あきらかに私は資本主義社会というものに適応できていないし、できる未来も描けない。ゆえに本書が読まれるのは当然の帰結であった。働けど働けど苦しくなるのなら、働かないをするほかない。 「スラック(slack)」という語は古英語の変異体から発生し、もとはロープのような物体の物理的な特質を意味した。十七世紀に「slacken」が一般に活動の弛緩を意味しはじめ、十九世紀までに「スラック」は商売の停滞や一時的な不景気を指すようになった。(p.25) お金にならないことばかりかお金が出ていくことばかりやっている本屋の私は、常に十九世紀におけるslack状態であり、のちにslacker=働かない者になるのも当然の帰結ということか。産業革命を経て資本主義が定着し、その規範のなかではうまく生きられない=お金を得られない者たちがやはりいて、かれらがスラック(状態)からスラッカーになることを選んだのだとしたら、それはいまの私には希望に感じられる。
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