
DN/HP
@DN_HP
2025年9月26日

野原(新潮クレスト・ブックス)
ローベルト・ゼーターラー,
浅井晶子
これは素晴らしかった、傑作!というのも間違いじゃないけれど、「傑作」という言葉はちょっと格式張った気がするし、もう少し個人的で感情的でもあるし、なんと言ったらいいかな、と考えてみる…… ああ、この感じは「愛おしい」のかもしれない。多分そう。わたしの愛おしい小説。そんなことをしっとりしながら思う。
自らの物語を語る街の墓地に眠る人々にはそれぞれの声があって、それは様々な文体で書き分けられる。それを現実で聞く会話のように自然に読(めることも凄い)んでいたけれど、章が変わるたびに全く違う響きがあることに改めて気がついたときにめちゃくちゃ感動した。きっと翻訳も素晴らしい。みたいなことを考えるとこれはやっぱり「傑作」とも言いたい気がしてきた。
愛おしい傑作小説。
個人が語る「真実」とそれを繋ぐことが出来る「事実」についても考えていた。多分それが世界のありようのような気が、しないでもない。また今度ゆっくり考えよう。










