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2025年9月27日

地上で僕らはつかの間きらめく
オーシャン・ヴオン,
木原善彦
かつて読んだ
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新潮クレスト・ブックス
「母さん。母さんは昔、記憶は選択だと言った。でも、もしも母さんが神様なら、記憶は洪水だと知っているだろう。」
人生を想うときに押し寄せてくる過去の記憶をもっとよく知ろうとする。知っていたことと新たに知れたこと、そこに、詩人は真摯に美しい言葉を与えていく。読まれることのない手紙が書かれ、やがて彼らのLIFEは物語、小説になる。それが本という手に取れるかたちになり、多くの人に読まれ、幾つもの感情が動かされる。その行為と過程、その先にあるものがきらめきだ。それは「まばたきするような一瞬」、つかの間よりもずっと長く残りつづける。
そのきらめきのなかで、わたしにも記憶の洪水が押し寄せる。そこにあるものをよく知ることが出来れば、喜びや救いがあるかもしれないけれど、同時に哀しみや痛みもきっとある。それらに与える言葉はまだ持っていないけれど、読まれることのない手紙を書きたい相手のことは想いはじめる。まだ、伝えたいことより伝えられないことの方が多いことに気がつく。それでも「思い出は二度目のチャンスだから。」。ため息をつく。そこには二つの意味がある。
「めくられる紙の一ページは、対のない一枚の翼だ。だから、空は飛べない。でも、僕たちは心を動かされる。」
言葉と文章、翻訳。過去の記憶、人生をよく知ろうとすること、それを書くこと、そして読めること。それに感動し影響されること。読後に誰かを想いため息をつくこと。その全てが素晴らしいと思えた。




