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@bunkobonsuki
2025年9月28日

金閣寺
三島由紀夫
三島由紀夫は何者か。
それは、本作における鶴川のような存在なのかもしれない。
『金閣寺』は溝口が生まれ、金閣寺を焼くに至るまでを描いた物語である。溝口の隣には鶴川と柏木という二人の男がいた。二人はそれぞれ陽と陰を象徴するような存在であり、鶴川は(溝口の視点では)一貫して太陽のような存在であった。
鶴川は溝口の陰惨な心を世間へ伝わるように翻訳してくれる。その翻訳はしばしば誤訳に陥るが、だからこそ溝口も彼の陽気を愛していた。
三島由紀夫は、類稀なる筆力と頭脳で現実に起きた金閣寺放火事件を「翻訳」した。それは必ずしも現実を正確に写したものではないけれども、だからこそ我々はこの作品を愛するのであろう。
