ころもで "引き出しに夕方をしまっておい..." 2025年9月29日

ころもで
ころもで
@koromode
2025年9月29日
引き出しに夕方をしまっておいた
引き出しに夕方をしまっておいた
きむふな,
ハン・ガン,
斎藤真理子
“心はいつもかすかになりたくて でも、何かを かすかにすることはできなくて まだ消えきっていないナイフは 私の唇を長く切り裂き もっと暗いところを探して 丸く後ずさりしていく 私の舌は” ──「心臓というもの」 やがて『ギリシャ語の時間』につながっていく作品だろうか。 この世の中に生きていて、どうしても自分が薄い膜の中(いや、外?)にいるような、馴染めなさが消えなかったり、世界が回る仕組み自体が暴力的に思えたり。そんな感覚に陥る。 そんなとき、空想上のどこか、ちいさくて清潔などこかで、私も小さく希薄なものになって、ずっと眠っていられたらいいのにと思う。 でも、そんなことはできるわけもなく、捨てきれない感情や願いも生々しくある。 どうにか人や世の中に向き合おうと表を向くけれども、自分からまろびでる言葉はおそろしく不正確で、みっともなくて、自分で自分を損なうかのよう。 それに自分の考えを言葉にするほど、世の中と私の相容れなさが突きつけられる。 ……と、読んだ人が曖昧に抱える感覚を呼び起こし、かたちを与えられるのが優れた言葉の力なのでしょう。 ハン・ガン作品に触れるたび、言葉を紡ぎたい、表したいという衝動にかられる。
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