
ヒナタ
@hinata625141
2025年9月29日

南洋標本館
葉山博子
読み終わった
日本統治下の台湾で最高の教育を受ける陳と台湾生まれの日本人・琴司は気の置けない友人同士であり、ともに夢であった植物学者になれたのに、出自によって隔てられ、それぞれに太平洋戦争に巻き込まれていく。
それにしても陳の人生よ…!対日協力者である父親のおかげで台湾人としては贅沢な教育と生活を得る一方、2等国民としての天井があり、やがて「日本人」としてインドネシアに派遣され今度は現地の人々を搾取する側に立ってしまう……
陳の人生の後半には、スカルノなど実在の政治家たちも出てくるインドネシアの独立運動にまで話が進んでいくところもめちゃめちゃ面白かった。
波乱万丈の陳に比べれば、何度も召集は受けたにせよ琴司の人生は凪のようではあるのだけど、それでも最後に陳を見送る時に彼が言った言葉があまりに誠実で本質を突いてて泣ける。そこにある友情は本物なのに、時代が二人を引き裂いていく。
反戦、反帝国主義のぶっとい背骨を感じる物語でした。こういう小説を読みたかった。
