ゆうすけ | オガノート "プラネタリウムのふたご" 2025年9月29日

プラネタリウムのふたご
友人に薦められたこちらの本。いしいしんじさんという作者も初めましてですが、文学部出身の友人が太鼓判を押すなら間違いないだろうと。 これがまぁ……とても美しい物語でした。500ページもあるのですが、この厚みの1ページ1ページが全て美しかった。 プラネタリウムに拾われた双子、ペンテルとタットルの数奇な運命。(おそらく一卵性で)そっくりだけど、少し性格の違う2人は、ある事件を機に全く違う人生を歩み始める。タットルは村で郵便配達とプラネタリウムの語り部に、ペンテルは稀代の手品師に。 終始穏やかな起伏の物語で、たゆたう優しい時間の流れの中、ぽつりぽつりと大切なことが語られていく。 「どんな悲しい、つらいはなしの中にも、光の粒が、救いのかけらが、ほんのわずかにせよ含まれているんだよ。」 どんなに実直に、平穏な毎日を送っていても、それでも起きてほしくないことは起きてしまう。運命はタイミングを選ばない。 物語中最大の悲しみを乗り越えた先に登場人物たちが見つけた「光の粒」「救いのかけら」の美しさに駅のホームでしばらく動けなくなってしまったーー読書で本当に涙が出たのは久しぶり。 「プラネタリウム」と「手品師」の対比も素晴らしかった。永遠の奇跡と刹那の奇跡、それぞれの物語を伝える双子。どちらにも憧れ、必要とする人たちがいて、目を輝かせる。 「だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの、笑いもなにもない、どんづまりの世界になってしまう。」 星はただの光で、手品は嘘かもしれないけど、自分の世界を美しく輝かせるものなら騙されていたい。 それは「騙される」というより「信じる」に近いかもしれないけど。 僕は僕の信じる美しさを信じ続けようと思った本でした。
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