saeko "物語化批判の哲学 〈わたしの..." 2025年10月1日

saeko
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@saekyh
2025年10月1日
物語化批判の哲学 〈わたしの人生〉を遊びなおすために
「批判の哲学」だから当たり前なのだけど、1章から4章まで現代人や物語・ゲーム・パズル・ギャンブルといったメディアへの批判が延々と続くので、途中で読むのがしんどくなった。たしかに切り口は新鮮で面白いのだが、まるでそのメディアを楽しむことそのもの自体が愚かだと言うような書きぶりにちょっとうんざりしてくるし、批判がほとんどを占めていて、ではどうすべきか?の提案は抽象的でほんのわずかだし、数々の文献を引用しているのはすごいはすごいのだが、他者の理論を援用した小難しい話がずっと続くので、疲れる読書体験ではあった。最後の5章「おもちゃ批判の哲学」がやっと前向きな内容だったので、ああ筆者がこの本を通して伝えたかったのはこういうことなんだな。とようやく腹落ちできた。 ただ主張自体は共感できる部分が多かった。最近読む新書に共通して言えることなのだけど、複雑な世界を単純化して捉えることの不適切さや危うさを糾弾する段階にきているのかなとも思う。たしかに自分も、就職活動で面接官にウケそうな物語を考えるのにはうんざりしたし、面倒な仕事に辟易としていたとき、上司に「これもいい経験になったよね!」と言われ、うるせえなと心底嫌な気持ちになった記憶がある。人生はただの時間の経過であり、物事の積み重ねなのだけど、因果関係で語りたくなる、そこに魅力を感じるのが人間というもの。「わかりやすさ」「伝わりやすさ」の名のもとに長く正当化されてきた人生の物語化に真っ向からNOを突きつけ、無目的に当意即妙に遊ぶような生き方を提案する筆者の主張は、成長神話や感動ポルノに侵された社会に一石を投じるものだと思う。
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