
ヨル
@yoru_no_hon
2024年4月9日

石狩少女
森田たま
2024年ベスト本
『風が、土が、日光が、果実をそだてるとおなじように、その土地の少女もまた、うるわしい果実の一つとして成長する。』──(p7より)
北海道の雄大な自然に身を置き、空を眺めることが好きで、文学を愛する少女。ただそれだけのことなのに、それすらおかしいとされる時代で、少女でも女でもなく、ただ一人の「野々村悠紀子」として愛されたかった彼女を想う。勝手に噂され変に注目を浴び、望んでもいないのにあれやこれやと話は進んでいく様は、不快ったらありゃしない。しかし、その悔しさにもへこたれず、強く生きようとする彼女と、北海道の美しい自然描写に胸が打った。「都ぞ弥生」の歌詞が冒頭で引用されているのも印象的
豊かにみのれる石狩の野に/雁はるばる沈みゆけば/羊群声なく牧舎にかえり/手稲のいただき黄昏こめぬ──(「都ぞ弥生」より)



