石狩少女

11件の記録
- Ribbon@Ribbon_3652025年4月4日読み終わった明治末の札幌に生まれ、大正・昭和と生きた作家森田たまの自伝的小説。 文学を愛するピュアな心と、美しく賢く自立心の強い女性の生きづらさが、北海道の自然とともにとても瑞々しく描かれていました。 私の曽祖母は、森田たまとほぼ同年代。同じく札幌で育っています。小学校の先生だったので、きっと本も好きで勉強もたくさんしていたはず。 曽祖母はとても長生きで、私もとても可愛がってもらいました。私はあまり覚えていないのですが、私に最初に字を教えてくれたのは曽祖母だそうです。 自分の軸がしっかりあって、古い価値観にも動じない主人公の悠紀子。曽祖母はどんな少女時代を送っていたのかな、と思いながら読みました。 札幌の空気を感じながらこの本を読めるのは、とても贅沢です。 何より表紙デザインが素晴らしい。 タイトルと作者の名前と装画がマッチしすぎていて、どれだけでも眺めていられます。 さらにこの帯の色とコピー……。 最後の「い」がコケてるのも含めて、おしゃれすぎやしませんか。 装画は坂巻弓華さん。背景の青とりんごの赤のコントラストと少女のTシャツの白のコントラストが美しい。 間違いなく今年読んだ本の表紙大賞になりそうです。 本は眺めるだけで楽しい。
- ヨル@yoru_no_hon2024年4月9日2024年ベスト本『風が、土が、日光が、果実をそだてるとおなじように、その土地の少女もまた、うるわしい果実の一つとして成長する。』──(p7より) 北海道の雄大な自然に身を置き、空を眺めることが好きで、文学を愛する少女。ただそれだけのことなのに、それすらおかしいとされる時代で、少女でも女でもなく、ただ一人の「野々村悠紀子」として愛されたかった彼女を想う。勝手に噂され変に注目を浴び、望んでもいないのにあれやこれやと話は進んでいく様は、不快ったらありゃしない。しかし、その悔しさにもへこたれず、強く生きようとする彼女と、北海道の美しい自然描写に胸が打った。「都ぞ弥生」の歌詞が冒頭で引用されているのも印象的 豊かにみのれる石狩の野に/雁はるばる沈みゆけば/羊群声なく牧舎にかえり/手稲のいただき黄昏こめぬ──(「都ぞ弥生」より)