
ハム
@unia
2025年10月3日

性と芸術
会田誠
読み終わった
キャンセルカルチャーに見舞われた会田誠が自身の作品について解説しているのだけど、芸術家が言葉で表現しなきゃならないというなんて野暮な社会なのだろう。
でも芸術への向き合い方って義務教育でもあまり踏み込まないし、積極的に学んでいかないと理解しにくい側面があるから感性だけで芸術家の表現を受け止めきれないのはけっこうな頻度で起きてしまっている気がする。
〈私は芸術というものは「一つのメッセージを伝える容器」という役割をなるべく拒絶すべきだと考えている。〉
〈芸術はそういった一般的な言語・思考の空間と同じ次元にあるべきではない。それでは「わざわざ芸術をやる意味」がなくなってしまう。
私は芸術は究極的には何も主張しないと思っている。芸術はナンセンスを、意味の絶対零度を目指す。〉
この本を読むと彼の作品の意図や彼自身が思うところの芸術の意味をしっかり体現していることがよくわかるし、読んだうえで作品を見ると確かな納得感もあって、会田誠の芸術家としての評価も頷けると思う。
でも芸術にふだんあまり馴染みのない人が彼の「犬」を見たら、特にフェミニストたちが怒るのもわからんでもないけど、不一致や不和を生むという視点を見落としてるから話が平行線なんだろう。
議論も織り込み済みな芸術を提示しているのだけど、万人が納得するのは無理ということがまた芸術が存在する下地でもある気がする。
ニーチェ、ランシエール、松岡正剛、永井玲衣、など最近に読んだ人たちの思想との親和性があって思考が深まる読書でした。





