橋本吉央 "女の子の背骨" 2025年10月4日

橋本吉央
橋本吉央
@yoshichiha
2025年10月4日
女の子の背骨
女の子の背骨
市川沙央
表題作「女の子の背骨」。 主人公ガゼル(本名なのか、ニックネームなのか?)は筋肉が弱まる病気がある10歳の女の子。姉も同じ病気で、より重症であり、人工呼吸器、食道と気道を分割する手術などを受けている。 夏休みに、姉は日本において、父と母と叔父叔母と共にグアムにバカンスに来ている中での出来事や思うことを、姉への書き置いてきた手紙や過去のやり取りなどを回想として挟みながら語っていく。 病気が重い姉に周囲の注目が集まりがちなきょうだい児の問題もバックグラウンドとして感じさせつつ、一緒の空間にいながらも大人と子どもでどこか決定的に分断が起こる環境、そしてそれに大人は無自覚あるいは気付いていても何もしようとしない、さらに子ども側は実質主人公ガゼル一人になりがちな構造。そういう自由であるようでいて強い閉塞感を主人公のガゼルから感じた。 悪態文学・少女版であり、きっと作者も子どもの頃から周囲の大人たちを少し引いて冷めた目で観察していたのだろう(作家になるような人はそういう人が多そうだが)な、と感じたりした。 「オフィーリア23号」でもそうだけれども悪態の文体で紡がれる言葉としての不満に「必ずしも現れていないもの」が、むしろ大事なのかもしれない、それを隠すための理論武装し洗練された悪態、という構造なのかな・・・と想像したりした。
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