たかとし "アンパンマンの遺書" 2025年10月4日

アンパンマンの遺書
アンパンマンの遺書
やなせたかし
やなせたかしが自分の人生を振り返る本。 漫画家になりたいのに、なぜか頼まれる仕事は漫画とは違うことばかり。それでも器用にこなして、ヒット作を生み出す。だけど、それで有頂天になるどころか「私はいったい何者なのだ?」と悶々とする日々。 名だたる人たちと一緒に仕事をし、そしてヒットするところを見ると、やなせたかしは紛れもなく「天才」なのだろうと思う。見よう見まねでシナリオ描いたり舞台演出するけど、それがちゃんと様になってるから、本当に頭がよくてセンスのある人だったのが伺える。本人は「なんか見よう見まねでやってみたら、偶然、うまくいってしまった」みたいに書いているが、これはぜひ、彼と仕事した人たちの声も聞いてみたいと思った。 権威を嫌い、好きなものは好きという純真な表現への想いや、彼の人間性に惹かれた。 私にとっての、やなせたかしは「アンパンマンの著者」だけれど、それ以外のことをたくさんやっていたことや、彼自身、絵本作家になるなんて全く考えてなかったということ。 本編の最後は「◯年◯月、やなせたかし死す。全財産はアンパンマンに贈る」で締められていたけど、そのあとで文庫版あとがきがついていて「まだ終わらなくてよかったね」と安堵した。 人生の最後までエンターテイナーだったんだなと感動し、人を喜ばせることが大好きなやなせたかしに感銘を受けた。 この本、著者が生きてるうちに読んでおきたかったと後悔した。 あと、終盤の詩に涙がでた。 「生まれた時はひとりだったし 死ぬ時もひとりだもの 今ひとりだってさびしくない でも少し さびしい なぜだろう?」
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