hayata "世界のすべて" 2025年10月5日

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@hayata
2025年10月5日
世界のすべて
世界のすべて
畑野智美
装丁が目を惹くな、と思い購入したまま置きっぱなしになっていた本。ふと、読み始めてみると自分が普段いる世界とは違うアングルで世界を描いていて、グッと惹き込まれる。この本のテーマは、セクシャリティというところだろうか。特定のセクシャリティにフォーカスをあてるのではなく、いろんな種類の人たちをアセクシャルの主人公がフラットな目線で感じたり、関わったりしていくストーリーが興味深い。出てくる登場人物たちを、ただ単純に闇雲に肯定するのでも、忌避を示すのでもなく、理解を示す主人公の在り方が印象的で、主人公の無色性(色的には紫だが、描き方的には透明なレンズに見える)が他の登場人物の中にある葛藤や逡巡を描き出すのにちょうどよく、そのカラフルな色にあてられて主人公の中でも内的な変化が生まれていく様の描き方が素敵と感じる。白でもなく黒でもなく、赤でも青でもない、劇的なストーリーでもなければ、チルな安らぐ感じでもないが、その曖昧さと不確定さがそれぞれの不確実・不確定さを描いているような気がした。
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