中原メロス "失われたスクラップブック (..." 2025年10月5日

失われたスクラップブック (ルリユール叢書)
語り手が次々と切り替わり、それぞれの会話と内的独白が繰り広げられる。何の繋がりもないような内容バラバラの小話がいくつも続くが、最後にはとあるテーマに行き着き、多数の声がひとつにまとまってゆく。その瞬間はまるでラヴェルのボレロを聴いているよう。 最初は読み切れるか不安だったけど、語り手の切り替わりや文章がものすごく滑らかで、全体的に流れるように読めた。なんなら最後の200ページは一気読みするほど目が(?)止まらなかった。 訳文だと一人称が「僕」「俺」「私」といった形で分けて表現されているけど、原文だと全部「I(アイ)」なのだろうか…。この一人称の使い分けのおかげで語り手の切り替わりに気付けた部分が私は多かったので、1つに統一されていたと思うとぞっとする。翻訳大賞を受賞されたのも、ここのポイントが考慮されてたりするのかな。 それと自分は意外と、環境問題を扱った小説が好きかもしれないという気付きがありました。 この本は、オールタイムベストに入るかもしれないです。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved