Miyoshi "カフネ" 2025年10月5日

Miyoshi
Miyoshi
@miyoshi
2025年10月5日
カフネ
カフネ
阿部暁子
これは希望の話でもあり絶望の話でもある。 構成としては、主人公である野宮薫子の弟・春彦が急死し、終盤にその謎が明かされるという点ではミステリーの形をしており、弟の元婚約者・小野寺せつなとの交流や家事代行サービス・カフネでの活動、離婚した元夫との関係性には依存症、ネグレクト、不妊治療などの社会問題が散りばめられている。 三人称だが薫子の視点で話が進むので、終盤は薫子からせつなへの執着が大きすぎるように感じられ、せつなの気持ちを無視して薫子が独走しているようにも読めてしまった。 良き弟がいて、理解のある夫がいて、地に足のついた職場に勤めていて。弟は家族想いで、ちょっと生意気な婚約者がいて。小野寺せつなは若くて、子供も産める健康な身体を持っていて。その認識はすべて誤っていたことを知ってもなお、野宮薫子が他者に向かって手を伸ばし続けることは希望だし、その原動力がもう叶わない自分の子供への愛情だというところは、結局はその呪いからは解き放たれることはないという絶望のように感じた。
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