読谷 文 "ムーア人による報告" 2025年10月6日

読谷 文
読谷 文
@fumi_yomitani
2025年10月6日
ムーア人による報告
ムーア人による報告
レイラ・ララミ,
木原善彦
フィクションということもあり、スペイン遠征隊のフロリダ探検の部分は今ひとつノリきれなかったが、奴隷のエステバニコがかつてムスタファであったときの生活の描写が、生き生きと美しくて好きだった。そこだけずっと読んでいたかった。永遠に失われたものを振り返って書いているからというのもあると思うけど。「親愛なる読者よ」とか言っていきなり話しかけてくるのが油断ならなくてチャーミングだった。 誕生してから奴隷になるまでの人生が彼にも他の誰にも当たり前にあるはずなのに、「奴隷」と紹介された瞬間に我々の思考は彼ら/彼女らのこれまでの人生に対して簡単にベールを下ろして不可視化してしまう。その傲慢さを突き付けられた作品だった。 あとこれは苦言だけれど、裏表紙や宣伝文句にあらすじ書き過ぎ。見たくなくてもうっかり目に入るところにあんなに書くのは、読者の読む楽しみを簒奪する行為でしかないと思う。
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