
saeko
@saekyh
2025年10月9日

母親になって後悔してる
オルナ・ドーナト,
鹿田昌美
幼い頃から、子どもが欲しいと思ったことはなかった。社会人になって、経済的に自立してからは、自分の人生が自分のものになったという感覚を得て、子どもを持つことで、その主導権を明渡してしまうことになるのは嫌だと思っていた。
しかし30代に突入して時間が経つにつれ、「子どもがいたほうがいいのかな」と思うようになった。しかしいまだに、「欲しい」とまでは思えていない。
本書を読んで、この「いたほうがいいのかな」という考えに潜む固定観念に気づかされた。女性は、母親になることが正しい生き方で、そうでない選択肢をとる人にはなにか問題があるのだと、実はそういう考えが染みついているのだと思う。マイノリティになることが怖いし、「子どもがいないことで数十年後に後悔するんじゃないか」とも思ったりする。しかしきっとそれは、「子どもがいないことで後悔する」という考え方をいつのまにか内在化させてしまったからではないか。
本書は子どもを持たないことを奨励する本ではない。今も昔も抑圧されつづけている、母親であることの苦悩と後悔を表明することの意義に光を当てる画期的な一冊だ。研究を通して、いかに母親が完璧な存在であることを求められているか、子どもを持つべきという社会的圧力をかけられながら、子どもができたら本人の責任とされて、声をあげることを否定されているか、母親が無視無欲で慈しみ深くあることを求められ、自己を抑圧されて「顔のない存在」となっていることが浮き彫りになる。
本当は自由でいいはずなのだ。子どもがいてもいなくても、子どもがいて幸せでも苦しくても。そして苦しいと表明することは、母親であることや子どもの存在を意味しない。本当は後悔していると言っていいのだ。どんな選択にも後悔はつきものなのだから、母親になることを後悔して、それを分かち合うことで、女性として、人間としての生きやすさに繋がっていくと気付かさせられた。





