
torajiro
@torajiro
2025年10月9日

昨日、若者たちは
吉田修一
読み終わった
香港、上海、ソウル、東京、4つの都市で暮らす若者を描く短編集。元は『オリンピックにふれる』というタイトルだったものが改題されて『昨日、若者たちは』になっており、4編それぞれの若者たちの人生にオリンピックが何らかの形で「ふれて」来るのだけど、その触れ方や距離感は四者四様でオリンピックを射程圏に目指す距離にいる人もいれば、周囲の人の間接的な視点で触れる人もいて、それは読者である私たちもきっとそう。私はまったく近さを感じないものだったが、自分の人生に何らかの形で触れたという人もいたのでしょう。そして改題されたタイトルでは昨日という言葉が用いられて日常が過ぎていくことが想起されるのですが、遠い過去から近い過去まで、そしてこの先に続いていくものまで、必ずしも思い通りにならないというかむしろままならないことの方が多い日常を積み上げながらそれでも歩んでいく微妙な機微を描いてくるこれぞ吉田修一という感じの短編集でとても良かった。
